更新日 2002-12-30

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ちまたのピーチクパーチク
イタリア人が子供に与える姓の話

 10月初めにヴィットリア・フランコ議員は、生まれた子供に与える姓に関する法令1454条に関し、「両親の希望によっては、父親の姓ではなく母親の姓、もしくは両方の姓を与えることができる」という修正案を上院で提案した。イタリアには「子供に父方の姓を与えることを義務づける」法は存在しないが、出生届け提出の際、自動的に父方の姓で受理される。母方の姓で受理してもらいたい場合は、特例として困難かつ時間のかかる手続きを必要とするらしい。例えば母マリア・ビアンキ(イタリアの女性は結婚しても結婚前の姓を名乗る)、父ピエロ・ロッシの間に生まれたルカは、特例が認められない限りルカ・ロッシとなる。だが今回の改正案が通れば特別な手続き無しにルカ・ビアンキ、もしくは双方の姓をとってルカ・ビアンキ・ロッシともなり得るわけだ(両方の姓をとる場合、アルファベット順につける)。
 両方の姓を子供に与えることが許可されているフランス、スペインでは、アルファベット順ではなく、最初に父方、後に母方の姓をつけると決められており、ルカ・ロッシ・ビアンキとなる。両国とも、母方の姓ひとつのみをつけることは許されていない(父親の姓ひとつだけは可能)。またドイツ、オーストリアでは父母どちらかの姓をひとつ選ぶのが原則だそうだ。
 イタリアの話に戻ると、ニつの姓を持った人同士の間の子は4つの姓を持ち得るのかと言うと、フランコ議員によれば「その時点で各親が自分のニつの姓のうちのひとつを選んで与える」ということ。同改正法案に賛同しているのは中道右派の、娘を持つ議員たちで、これからも上院で話し合われる予定だ。
 一方、名前の方は姓とは違い、子供に複数の名をつけることはイタリアでは普通に行われている。ただ、primo nome(第1の名)以外は普段使うことがないせいか、忘れている人も多いらしい。そして名前と言えば、今年8月末にナポリ近郊の町で、父親が大の競馬ファンだったことから、生まれた男の子にヴァレンという、現在大人気の馬の名をつけて妻に内緒で役所に届け出、それを知った妻が怒り狂って夫を訴えるというニュースがあった。別にヴァレンは子供の名として悪くないと私は思うのだが、信心深いナポリ人にはやはりジェンナーロ(ナポリの守護聖人)の方がいいのだろうか。だが、このニュースが報道された直後の宝くじでは、多くのナポリ人がこの縁起の良い名の子供の生まれた日の数を使って、幸運を手に入れようとしたという。


家事協力するイタリア男性増加中?!

 近年イタリアに大幅に増えた大型スーパーに閉店まぎわに行くと、仕事帰りのキャリアウーマンが夕食の材料を慌てて買い込む姿に混じって、男性が買い物カートを押している姿をよく見かけるようになった。ステーキ用の肉や、最近イタリアでも人気が高まっている有機栽培コーナーで野菜や果物を一生懸命選んでいる様子を、「マンモーネ(マザコン)が多いイタリア男性もやっとマンマの元から自立したのね」と感慨深く眺めている私だが、ある家電メーカーの調査によると現在のイタリアでもいまだに、30年前同様に家事はマンマや妻に任せっきりで一切手伝わない男性は多いという。
 欧州各国27〜45歳の既婚キャリアウーマン計2100人を対象に行ったアンケートで、イタリア以外の各国女性の大半が「夫は家事を習慣的に手伝う」と答えたのに対し、「夫の積極的な家事協力がある」と答えたイタリア人女性は33%であった。中でも特に協力を得られない家事のトップは洗濯で91%、次にアイロンがけ86%、皿洗い80%の順である。 
 何事も妻任せのイタリア人男性が多い原因はやはり、幼少の頃から何でもやってくれたマンマの存在が大きいのではないか、と私は思う。南伊カラブリア出身の私の知人(50歳代)は、40代までマンマと同居し、家事はもちろんのこと、手足の爪までマンマに切ってもらっていたという筋金入りのマンモーネだ。今も彼のマンマは50の息子がレストラン、ディスコに行くと言えば、そっとお財布におこずかいを入れてくれる。以前、彼がスピード違反で免許証を没収された時など、警察まで出向いて抗議し、免許証を取り返してきたそうだ。
 だが、このような目を見張るマンモーネが今も健在のイタリアとはいえ、共働きが急速に進む現在の状況では、家事を分担している夫婦や、結婚したら分担しようと考えているカップルが、過去に比べて増加しているのは確かであろう。そこに目をつけたのか、北イタリアでは既婚男性対象の家事教室が人気らしい。かつて高度経済成長時代にバリバリ働いていた人達も通っており、彼らは今や家事を積極的に手伝い、子や孫の世話にも協力し、家族を中心とした新たな生活に生きがいを感じているのだという。
 イタリアでも日本と同じで、「結婚してから7年目は別居や離婚につながるような危機が夫婦の間に訪れやすい」らしいが、「家事を分担することで夫婦間に信頼感が生まれ、安定し、また、自分の中に潜んでいた女性的な資質さえも見出し、性格的に穏やかに、攻撃的でなくなる」とイタリアのある女性精神科医は言う。あなたの旦那様、家事協力してくれますか?


Mariko Aotani